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Channel: 東京中央美容外科【TCB仙台院】 院長 安本 匠 美容外科の匠
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ニッポンの医療を考える3/フリーアクセスと紹介状

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読売新聞の記事によると、紹介状なしで大病院(500床以上)を受診すると、初診料とは別に5,000円の追加料金が発生する仕組みになるそうです。病院は専門的な治療に専念する、勤務医の負担を軽減するなどの目的があるそうです。

ニッポンの医療の問題点としてしばしば挙げられるのが、フリーアクセスです。医師法で「応召義務」が定められていて、患者さんは好きな医療機関を好きな時間に受診できるのです。そして、医師は来た患者さんは必ず診療しなければならないのです。もちろん、これは全ての人が平等に医療を受けたり、今すぐ処置が必要な重症者などが手遅れにならないようにするためのものだと思います。ところが、実態は「なんとなく大きい病院の方が安心」「すぐ近くだから」などの理由で、必ずしも大病院でみる必要がない方まで大病院に通っているため、大病院の外来は患者さんで溢れ、長い待ち時間、短い診療時間、医師の疲弊を招いているというのです。

確かに、外来が患者さんで溢れている一因はフリーアクセスの問題もあるかもしれません。ただ、溢れているのは開業医も同じですよね。また、いくら溢れているといっても、大病院の外来はせいぜい17時には終わるのです。他の業務に比べれば大した疲弊ではないはずです。

私の場合、心臓血管外科でしたから、紹介状なしの患者さんが突然新患で訪れるということは皆無でした。新患は循環器内科や開業医からの紹介のみです。もちろん救急外来に直で搬送されてくる方もいますが、それも救急科からの紹介です。術後は循環器内科や開業医にお返ししてしまいます。循環器内科も急性期が過ぎて、薬の調整も不要になれば開業医にフォローをお願いして、できるだけ自分の受け持ち患者さんを減らそうとしています。その方が、医師もより重症な患者さんに集中できるし、患者さんも毎月同じ薬をもらいに遠くの病院に1日がかりで行かなくてよくなるのです。こういった、大病院と開業医との連携は、今どきどこの大病院でも行っているので、フリーアクセス自体に問題はあるものの、医師の疲弊の主な原因とは思えません。そもそも、大病院では紹介状なしの患者さんは既に診ていない診療科が多いので、効果は限定的ではないでしょうか。

医師の疲弊の原因は、少ない休日(年間2週間程度)、年間350日程度・24時間のオンコール体制(電話があれば病院にかけつける、必然的に常に病院の近くにいなければならない)、早朝から深夜までの勤務、週複数回の当直と翌日の長時間勤務、医師でなくてもできる膨大な書類仕事、などではないでしょうか。そのようなことが改善されない限り、医師の疲弊が解消することはないと思います。それをニッポンに求めても無理なのです。今のところ一部の医師が疲弊しているだけ、他に誰も困っていないのですから。

世の中の仕組みを変えるのは難しいものです。だから、それに合わせうまく生きていくか、それが及ばないところに自分が移るしかないのです。今日はこのくらいにしておきましょう。

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