名古屋大学医学部附属病院の救急科医師が一斉に9名(21名中)退職するということで、ちょっとした話題になっていますね。記事によると、退職理由は「職場環境への不満」だとか。一般の方から見ると、「一斉にやめてしまって、名古屋の救急医療体制大丈夫ですか?」という感想でしょう。
おそらくは、残った医師、特に救急以外の診療科の負担が増えるが、救急医療体制には影響がないといったところでしょうか。
一般に、救急外来と呼ばれるところは、かなり大きい病院でもよく働く研修医と1-3名程度のお目付け役の救急科医師によって運営されています(救急外来があっても救急科自体がない病院もたくさんあります)。彼らの仕事は迅速に診断して、専門医をコールして終わりです。なぜなら、ほとんどの疾患が救急科の専門外の疾患だからです。重症の熱中症や、ある種の中毒などが彼らの専門ですが、そのような患者さんが来ることはほとんどありません。救急科の医師が手術したり、何でもしたりというのは、テレビとか漫画の世界です。
そのため、医師の世界では珍しく、救急科は土日が休みだったり、17時の定時で帰れたりする診療科です。夜間・土日などは他科で救急当番を回したりしているので、8時から17時勤務で土日は休み、週1回の当直なんていう夢のような職場環境の病院も多いのではないでしょうか。もちろん、入院患者も基本的に受け持たないため、病棟業務や夜間電話で呼ばれたりということは滅多にありません。そのため、麻酔科や放射線科などと同様に、いわゆるQOmL(Quality Of my Life)を大事にするような方たちに人気の診療科でもあります。
そんな方たちが抱く「職場環境への不満」とは何か、大体の察しはつきます。21名もいたら、いろいろ大変なのだと思います。
今回の様な騒動が、救急科ではなく心臓血管外科や脳神経外科で起きていたらと思うとゾッとしますね。彼ら数名がやめただけで、その地域の3次救急体制は崩壊します。「職場環境への不満」は彼ら全員が抱いていると思います。大丈夫なんでしょうか、これからのニッポンの医療。今日はこのくらいにしておきましょう。

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