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Channel: 東京中央美容外科【TCB仙台院】 院長 安本 匠 美容外科の匠
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ブラックペアン問題/元心臓血管外科医の視点からの感想

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なかなか普段テレビドラマを見れないことが多いのですが、今回は珍しく録画して毎週見ていました。

 

TBSドラマブラックペアン花のち晴れ、その他いくつかです。

 

中でも、私の専門分野である心臓血管外科を題材にしたブラックペアンは家族にウンチクを語りながら毎週楽しく見ていました。医療ドラマは、私たち医師から見ると、作りが雑で間違いも多く、現実離れしている設定にうんざりすることも多いので、あまり見ないようにしているのですが、ブラックペアンやドクターXのように、リアリティーの追求にこだわっていない、トンデモ設定のドラマであれば、それはそれでエンターテインメント、物語としては逆に楽しく見れますね。

 

心臓血管外科医が大半の時間を過ごすICUや術後の呼吸・循環管理〜抜管までの過程など一切排除して、さっきまで手術室で死にかけていたのに、ICUに入ることもなくいきなり一般病棟に戻ってきて、もちろん呼吸器も外れている、このようなことは現実世界ではありえませんが、ドラマをわかりやすくするための設定として、広く視聴者には受け入れられているようですから、ブラックペアンも例外ではありません。呼吸器に繋がっていたら話せないのでドラマの進行に支障がでますからね。

 

また、人工心肺が回っているのに、突然の出血でひどく慌てふためく場面や、心停止に慌てる場面も毎度馴染みのちり紙交換車です。下々の者によって涼しい顔で手際よく止血が完了してしまうと、渡海くんの出番がなくなってしまいますので致し方ありません。※人工心肺が回っていれば、出血しても回収できますのでそうあわてる必要はありません。心臓が止まっていても、機械が心臓の役割を果たしているので、これまた慌てる必要ありません。

 

医療ドラマでありがちな、手術室を上から見学する部屋がなかったことは高評価で、他のドラマも見習って欲しいです。しかし、患者ほったらかしで大会議室に病院中の医師が集まってモニターで手術見学するシーンはいささかいただけないですね。暇な病院という設定であればOKです。また、勉強のために手術を他大学から見に来るなら、手術室で術者に張り付いて見学するのが普通であり、礼儀ですね。ただ、帝華大学の西崎教授は、東城大学の手術が失敗するのを見に来ている無礼者という設定なのでそれも仕方ないですね。

 

他にも、挙げたらキリがないのですが、気になった点、疑問点があるので、わかる人がいたら教えてください。

・造影CTをすることなく大動脈解離を診断、手術室に直行して患者も画像も見ていない教授の指示に従い術式を間違えてえらいことになる

・よくわからないが、突然僧帽弁の手術を追加してみたら良くなった

・僧帽弁形成術を行うべき患者に、研究のために最新医療機器を用いた人工弁による僧帽弁置換術をゴリ押する

 ※できる限り人工弁は使わないのが原則

・A型大動脈解離で今すぐ緊急手術が必要な状態なのに、自覚症状もなく飲み会に参加する教授とその取り巻き医局員

 ※大動脈解離は猛烈な胸背部痛のある疾患で、緊急手術しないと死んでしまいます

・ペアンが入った患者はなぜ再手術した?結局ペアン外しただけ?

・論文の為に術式がコロコロ変わる

・病棟ナースが手術室の器械類で謎の作業をしている

・どいつもこいつも手術がまともにできない医者ばかり

 

現実世界の心臓血管外科は、良くも悪くもブラックペアンの世界観とはかけ離れたものです。優秀で一生懸命な医師が、患者の命を救うために最善の方法を常に考え、日々頑張っています。

 

突っ込みどころ満載で、医療界からバッシングの強いブラックペアンですが、個人的にはエンターテインメントして楽しく毎週拝見させていただきました。続編を期待しています。

 


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